イスラエル軍による地上侵攻が近い――。米国は武装組織ハマスへの報復を支持。一方で、パレスチナに同情を寄せる日本人は少なくない。ガザ地区を封鎖して電気や水の供給を止めるのは国際法違反だと非難する声は欧州からも聞こえてくる。こうした冷ややかな「空気」を、イスラエル人はどのように受け止めているのか。日本に留学経験がある軍事史家で、国立ヘブライ大学教授のダニ・オルバク氏がAERAdot.に緊急寄稿。胸の内を明かした。

【写真】柔和な表情から一転…鋭いダニ氏の眼力

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 2023年10月7日土曜日の朝は、イスラエルでは祝祭日となるはずだった。ユダヤ教の大型連休の終わりは、ユダヤ教の経典であるトーラー(律法)の巻物を持って踊ることで祝われる。若者たちの多くは、自然が豊かなイスラエル南部のガザの国境付近で野外パーティーを開いて休日を祝うことを好んでいる。

 この朝、ハマスの1500人以上の武装勢力が国境を越えてイスラエルに侵攻し、数十の軍事基地や村落、キブツ(集団農村)を占拠したのだ。彼らは自然保護団体を襲撃し、いくつかの大きな町に侵入した。事実、大虐殺の最中だった。

 100人以上の人質を取っただけでなく、ハマスのテロリストたちは、遭遇したすべてのユダヤ人とアラブ人も民間人と兵士を問わず、組織的に殺害した。これはテロではなく、大虐殺である。

 現在、イスラエルとアメリカの公式情報源によって確認されているように、小さな赤ん坊の斬首、村人を生きたまま焼き殺した。夫の目の前で妻を殺害などおぞましい行為があった。ナチス時代のホロコーストを生き延びた高齢者は自宅のベッドで撃たれた。あるハマスの過激派は若いベドウィン(遊牧民族)の少女に40発の銃弾を撃ち込んだ。飼い主を守ろうとした忠実な家族の犬は、冷酷に撃たれた。レイプの報告や証言もある。ベエリやクファル・アザのようないくつかの村では、人々は溝に押し込まれ殺された。

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日本の冷淡な対応に驚き、失望