民間人が密集する環境での戦争は民間人に避けられない危険を伴う。イスラエル軍は人道的回廊を作り、ハマスに属さない難民のための安全地帯を設けるべきだ。しかし、過去の誤った「人道主義」によって、作戦を早々に中止させたり、ハマスの標的への爆撃を制限したり、敵に電気、水、燃料を供給させたりすることは許されない。ハマスが自らの行動の結果から逃れられるようなことがあってはならない。ハマスの回復と再武装を許すことは、イスラエル人にとって存亡の危機であり、パレスチナ人にとっても、長期的には悲惨な結果をもたらすかもしれない。

指導者の罪を裁くことはこの地域のすべての人に有益だ

 多くのアラブ人やパレスチナ人も、ハマスの所業に恐怖を感じている。アラブ人とドルーズ(イスラム系宗教団体)はイスラエル軍、警察、病院、その他の重要なサービスに従事している。アラブの町は連帯を示すためにユダヤ人被害者に避難所を提供した。イスラエルのアラブ人の多くは、ハマスに殺害された親族を追悼している。戦争が終わった後は、ガザの平和な住民のために、近代的な住居やインフラを備えた町を再建する絶好の機会となる。ハマスの問題をISISの問題のように扱うこと、つまりこの組織を解体し、指導者を逮捕し、人道に対する罪で裁くことは、この地域のすべての人々にとって有益なことだ。

 私の推測では、ガザでの戦争の悲惨な現実が世界中のテレビ画面に映し出される中、イスラエルは、この苦い現実の結果を無視することを選ぶ多くの人々の間で不人気であり続けるだろう。しかし、ホロコーストから70年後、イスラエル人とユダヤ人は、不人気という代償を払ってでも、自分たちの家族を守らなければならない。私の願いは、平和を愛する日本や世界中の人々が、時には悪をなだめるのではなく、悪と戦わなければならないということを徐々に理解していくことである。

 有名なアメリカ映画『グリーンマイル』では、主人公が残忍な殺人犯に言及し、彼がどのように被害者を操ったかを説明している: "彼は彼らを殺すために、彼らの互いへの愛を利用した"。ISISやハマスのような集団が、私たちの平和と人道への愛を悪用するのを許してはならない。少なくともイスラエルには、もはやそんな余裕はない。

【英文はこちら】 「Why Israel is unpopular」 Professor Danny Orbach, Hebrew University of Jerusalem

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Danny Orbach(ダニ・オルバフ)

Danny Orbach(ダニ・オルバフ)

Danny Orbach ダニ・オルバフ 1981年イスラエル生まれ。ヘブライ大学歴史・アジア研究学科教授。ハーバード大学で博士号(歴史学)取得。専門は軍事史、日本および中国近現代史。イスラエル軍情報部に勤務後、テルアビブ大学、東京大学、ハーバード大学で歴史学と東アジア地域学を学ぶ。歴史学者、評論家、政治ブロガーとして、独、日本、中国、イスラエルと中東の歴史に関する考察を精力的に発表している。邦訳『暴走する日本軍兵士―帝国を崩壊させた明治維新の「バグ」』(2019、朝日新聞出版)がある。

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