旧統一教会の信者による選挙支援の実態や政治家との近い関係などについては、安倍元首相銃撃事件以降はもとより、過去にも報道されてきた。
一方、違法ともいえるカネ集めや、政治家へのカネの流れなどを示した記録が他にもある。今から35年ほど前に、神戸地裁で旧統一教会と元信者らが争った民事裁判で、元信者のAさんが語った100ページを超す分厚い証言調書や陳述書もその一つだ。
Aさんは、専門学校に通っているときに旧統一教会の街頭アンケートに答えたことがきっかけで入信した。霊感商法や架空の理由で街頭募金などをするうちに、旧統一教会支部の経理など中核の仕事を任されるようになった。合同結婚式で挙式をすると、さらに重要なポジションに就いたという。
証言調書などを見ると、Aさんは、
「旧統一教会は二重の構造となっており、(表の組織が)集めたお金を裏の組織が管理し、文鮮明への献金、上納をしていた」
「表の組織は、旧統一教会が霊感商法とは関係がないような外見を作り出し、帳簿操作で納税を逃れていた」
と証言している。そして、月1回会議が開かれ、旧統一教会の「政治部門」と呼ばれる国際勝共連合の幹部も集まっていたという。
自民党だけでなく野党系議員の名前も
「会計は防衛の最前線。天のスパイたれ」
とスローガンを唱和させられ、1億円、2億円という“裏金”を運ばされることもあったとしている。使途としては、こんな記述がある。
「選挙の時期には、どこどこの代議士にいくら渡した、と公然と語られていた」
「自民党だけではなく、野党系の議員の名前もありました」
「幹部は指で3とか5とか示して、数百万円単位の提供をにおわせていました」
といった生々しい様子や、
「大阪の環状線で200万円くらい入った紙袋を網棚の上に忘れました。出てきませんでした」
などの“運搬時”の具体的な様子も書かれていた。
このように、旧統一教会は以前から政治家への選挙支援にとどまらず、資金提供もしていたというのだ。