サザコーヒーの店先にある「お客様へのお願い」。混雑時や満席の場合、「ご利用時間60分制」と明記してある(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

「いろいろな目的でいろいろなお客さまが見えますが、我々のコーヒーにも目的があるので、お互いさまなのです」

 鈴木社長も、充電がない緊急事態の時は、電源を使ってもらいたいと思っている。充電を目的に来る人もいるだろう。

 しかし、サザコーヒーとしてはおいしいコーヒーをたくさんの人に広める目的がある。鈴木社長は言う。

「電源を使いたいお客さまの目的と、お店の願いが、お互いに叶ってもらいたいと思っています」

OKともNGとも…

 SNSでもカフェで仕事をするのはどこまで許されるのかということはたびたび論争になっている。そんななか、大手チェーン「ドトールコーヒー」広報課は本誌の取材にこう答えた。

「お客さまの利用目的・方法に関して、チェーンとして統一の制限等は設けておりません」

 ただ、

「多くのお客さまのご期待に応えるため、一部店舗にて90分時間制を導入しており、長時間のご利用をご遠慮いただいている場合がございます」

 この問題、有識者はどう考えているのか。カフェで仕事をすることについて、経済ジャーナリストの高井尚之さんは、「一概にOKともNGとも言えない」と考える。

「そもそもカフェには二つの役割があります」

 まずは、飲食と場所の提供という「基本性能」。そして、「付加価値」だ。

 例えば、日常を脱する居心地のよい空間、レトロな雰囲気。はたまた、仕事ができる機能があるかどうか。高井さんはこう話す。

「カフェでどう過ごしたいかによって、店の選び方が変わってくると思います」

 ふかふかの椅子で客が談笑している、少し薄暗くて情緒的な雰囲気のお店。読書をする客もいる。そんなとき、ここで仕事をして長居してもいいじゃないかと思うかもしれない。だが、こうした店は、くつろぐのをコンセプトとしていることが多い。高井さんは言う。

「私ならそこで仕事はしません」

 では、高井さんが仕事をしてもいいと思えるカフェは?

 まずは、電源、Wi-Fi、間仕切りがある店。多少はパソコンやタブレットを触ってもいいと判断できるという。また、長時間座るとお尻が痛くなるような椅子が硬い店は、長居することを想定されていない。

「お店の雰囲気を見て判断してはいかがでしょうか」

次のページ