「在宅ワークのスタンダード化を目指す」と話す株式会社うるる・桶山雄平副社長
「在宅ワークのスタンダード化を目指す」と話す株式会社うるる・桶山雄平副社長
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 多くの在宅ワーカー、フリーランスのクリエイター、エンジニアなどと企業を結ぶビジネスマッチングサービス「クラウドソーシング」。経済産業省も地方創生の一環として注目し、その市場規模は2014年の時点で約400億円と急成長をしている。さらに、今後の市場予測では、18年に1800億円を超える市場に成長すると予想される。そのビジネスの範囲も、当初は単純なデータ入力が多かったが、WEBサイトの制作や企業のロゴデザインといった専門業務まで広がっている。

 それまで仕事を得られにくかった地方在住者、あるいは営業力や人脈不足でその実力を発揮できなかったクリエイターやエンジニアに新たな取引先を作るチャンスとなる。一方、発注する企業には幅広く優秀な人材を確保できる仕組みだといえる。

 だが、課題もある。労働単価の問題だ。WEBサイトの記事一本(1500文字程度)が数百円で発注されるケースもある。また、データ入力も、「BtoB」で外注していた単価の数分の1で募集をしている企業も珍しくない。あまりに単価が安すぎれば、誰も応募しないはずだが、驚くような安値の発注にも応募が殺到しているのが現状だ。

 新しい働き方を提案するクラウドソーシングだが、あまりに単価が安く「これでは稼げない」と思われてしまったら、この先の成長はない。そこで、“価格破壊”を解決するという意図も含め、今年3月に起ち上げられたのが「CGS協会」だ。

 CGSとは「クラウド・ジェネレイテッド・サービス」の略称。クラウドソーシングで集めたリソースをベースに、企業や一般ユーザーに対して提供するサービスのことを指す。簡単にクラウドソーシングとCGSの違いを説明すると、前者は「発注者の視点」で不特定多数の受注者に仕事を依頼するが、後者は「受注者の視点」で自分にあった仕事を見つけられる点だ。クラウドソーシングで在宅ワークをしようと考えている人の多くは、ビジネス慣れしていないケースも多い。「この仕事はこれくらいの値段なんだ」と、非常に安い単価での仕事を当たり前と感じてしまうこともある。また、価格交渉を持ち掛けた瞬間に、他の人に仕事を回されるというケースも少なくない。事実上、価格交渉やビジネスにおける条件交渉ができない状況ができてしまっている。それを避けることがCGSで可能になるという。

 CGS協会に加盟している企業は、「うるる」「ウィルゲート」「キャスター」「ベアテイル」「ムゲンアップ」 の5社(2015年3月時点)。「うるる」の桶山雄平取締役副社長は、次のように語る。

「現在のクラウドソーシングでは、発注側ばかりが利益を得ていて、受注者、つまり労働者はそのメリットを享受できていない。企業側、つまり発注者の視点で運用されてしまっている。それでは、必ずどこかで破綻する。それを避けるために、受注者の視点に立つ必要がある。CGSならばBtoBで価格交渉も条件交渉もできる。もちろん、発注者である企業にとっても、多くの受注者を管理する手間ひまが省け、クオリティーを担保できるというメリットがあります」

 「うるる」は創業時からCGS事業を展開し、現在は「shufti」という主婦向けのクラウドソーシングサイトを運営している。いわば、クラウドソーシング業界の老舗の一つだ。現在、クラウドソーシングを通じて、発注者である企業は安価な労働力を手に入れることができる。その半面、労働者は自分の労働力を安く買い叩かれているという見方もできる。

 では、日本よりも数年早くクラウドソーシングが普及している米国では、どうなっているのか。

「米国の場合、国内に限らず、世界の英語圏すべてをターゲットにできる。ニューヨークの企業が格安でデータ入力を頼みたいとき、英語圏の途上国ならばかなり格安で発注できる。しかも、受注した側は高収入というWin-Winの関係ができる。しかし、日本では言葉の壁があり、どうしても国内に受発注が限定されてしまう。そうなると、価格破壊が起こり、受注者側が一方的に安い単価での労働を強いられるという事態が起こります」

 一人一人の在宅ワーカーは弱い。だからこそ、CGSという形でビジネスを取りまとめる企業も必要になってくるのだ。CGS協会の考え方の根本には、クラウドソーシングで働く在宅ワーカーを守り、そのことでクラウドソーシング業界自体を守りたいという思いが込められている。一方的に片方が利益を享受するいびつな仕組みは破綻する可能性が大きい。このままではせっかくの素晴らしい仕組みであるクラウドソーシングが成り立たなくなる危険があるのだ。CGS協会は今年3月に発足したばかりだが、今後の活動に注目していきたい。

(ライター・里田実彦)