昨夏に続き、大隈講堂のステージに登壇した村上さん。神宮外苑への思いも語った(写真:早稲田大学国際文学館提供)

 作家の村上春樹さんが母校・早稲田大学で俳優・白石加代子さんと朗読イベントに登場した。「村上RADIO」ゼネラルプロデューサーの延江浩さんがリポートする。AERA 2023年10月16日号より。

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 村上春樹さんが早稲田大学大隈記念講堂のステージに上がったのは、昨年夏の「山下洋輔トリオ再乱入ライブ」に続き2度目だった。

 今年のイベントは、昨年演劇博物館正面の野外舞台での朗読会拡大版で、題して「村上春樹 presents 白石加代子の怖いお話『雨月物語』」。

 上田秋成の「雨月物語」は村上文学にたびたび登場するが、村上さんは白石加代子さんの朗読CDをずっと愛聴し、「……なんといっても真剣に怖いです。車を運転しながら聴いていると、ハンドルを持つ手が思わず震えてしまうほどです」とメッセージを寄せている。

 9月28日は「怖いお話」にぴったりの暑い夜で、大隈講堂には年配から現役学生まで、約1千人の聴衆が観客席を埋めた。

 午後7時、まず村上さんがステージに登場した。

「僕は1968年に入学しました。『早稲田小劇場 白石加代子』と書かれた看板があったんだけど、劇場には行きませんでした。それを白石さんに話したら、『ダメじゃない!』って叱られました。50年以上前のことで怒られて」と頭をかき、「でも、白石さんに叱られたら怖いです」と笑いを誘いながら、自らの学生時代を振り返った。

「神宮の森」大切な土地

 そして、話は「神宮の森」に。

「1回だけ早慶戦に行きました。神宮球場で歌われる、♪都の西北、早稲田の森に♪。実は歌詞はそこまでしか知りません。田中(愛治)総長に応援歌ですよねと尋ねたら、『校歌です』と言われました」と笑わせた後、神宮の森について語り出した。

「神宮には思い入れがあります。ホームグラウンドにしていたのがヤクルトアトムズ。あまりに弱いんで手塚治虫さんから(アトムという)名前を返してくれと言われた話もあって、ヤクルトスワローズになったんだけど、僕はずっと応援しています」

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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