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――完成した作品を観て、率直にどんな思いを抱いたのだろう。
アイナ:映画って編集でここまで変わるんだ、とびっくりしたことを覚えています。私が参加していないシーンと、東京で撮影したシーンが同じタイミングとして描かれていて編集の力ってすごいな、と。撮影されている時から頭にあったのですか?
岩井:いや、編集の段階ですね。
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アイナ:完成した作品を観るまで知らなかったので、「違う場所にいる二人も作品のなかでは共演していたんだ」と、自分が出ているにもかかわらず、初めて観るような感覚でした。
松村:僕は、人物たちの背景にきちんと余白があると感じました。登場人物が交わした会話って、これだけではなかったのだろうと想像力をかき立てられていくような感覚がありました。余白を感じられると、そこに存在する「人」を見ているような気持ちになる。「これなんだよな」「この感じが好きなんだ」と思いながら観ていました。
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2023年10月16日号より抜粋
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