(c)2023 Kyrie Film Band

アイナ:私も振り返ると「岩井さんの声色に救われたな」という思いがあります。お芝居も映画の現場も初めてだったので、「楽しい」「苦しい」という感覚もあまりないままスタートし、初日が終わった後に「お芝居の感覚って、こういうものなんですね」と既に始まっているのに聞いたりしていて。

 すぐ緊張しますし、プレッシャーを感じ始めると、とことん感じてしまうタイプなのですが、そんな私がありのままいられたのは、岩井さんの声色や、すごく寒いのに「寒い」と弱音一つ吐かず、一生懸命に動いてくださる周囲の方々の温度感のお陰だったなと思います。岩井組しか私は知らないけれど、岩井組が初めてでよかったなと思います。

(c)2023 Kyrie Film Band

「うおー」と叫んで

松村:岩井さんの話し方自体が、まるで「音楽」みたいですよね。

岩井:若い頃は、そんなことなかったですよ。昔の方が大きな声を出していたと思います。

松村:えー、想像つかないです。

岩井:みな年上だったから。10も20も上のスタッフに指示を出さなければいけないから、小声で言ったら「聞こえないよ」と言われるのがオチ(笑)。

 次第に気心が知れたスタッフが集まってくれるようになったので、大きな声を出す必要もなくなって。それに、撮影する内容にもよるかもしれないですね。アドレナリンを上げて撮らなければいけないシーンは、結構声を出していたと思います。

アイナ:確かに、そうだったかもしれません。

松村:災いが起こるシーンでは、本番に入る前に声出しをしましたよね。「叫べ!」という岩井さんの声掛けとともに、撮影前に「うおー」と、みなで叫んで。

アイナ:すごい、そこまで考えていらっしゃるんですね。

岩井:シーンがシーンなだけに、なんとなく撮影に入ってしまうと危ないな、と思ったんです。逆に、そこまでテンションを上げる必要がないシーンに、周りが「本番、本番!」と力強く声を掛けてしまうと、俳優たちとのチューニングが合いづらいというか。静かに言葉を発するシーンの撮影には、周りで鳴いている虫の声も聴こえているくらいのところから連れていってあげたい、という思いはあります。

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