大人は6時間以上、小学生は9~12時間の睡眠を――。厚生労働省は2日、心身の健康づくりのための「睡眠指針」の案を公表した。寝苦しい夜が続いた夏が過ぎ、心地よく寝られる季節。しかし、数時間眠れば十分という「ショートスリーパー」もいる。「人生の3分の1は眠って過ごす」とよく言われるが、「短眠」は健康に問題ないのか。
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厚労省の国民健康・栄養調査(2019年)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%、女性40.6%。さらに5時間未満の人は男性で8.5%、女性9.1%いた。
経済協力開発機構(OECD)の調査(21年版)では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、33カ国の中で最も短かった。
睡眠時間が7時間前後であれば、生活習慣病やうつ病の発症・死亡リスクが最も低くなるとされている。
厚労省の検討会は、適正な睡眠時間には個人差があることもふまえ、成人は6時間以上、1~2歳児は11~14時間、3~5歳児は10~13時間、小学生9~12時間、中学・高校生は8~10時間が推奨される睡眠時間とした。
睡眠時間が短くなれば、健康上のリスクも高くなる。しかし、そこには個人差があると、睡眠に詳しい筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の大石陽准教授は指摘する。
「もともと7~8時間寝る人が5~6時間の睡眠を続けると、糖尿病や肥満になりやすい因子が上がるなど、不健康になるというのはほぼ間違いありません」
しかし、もともと4~5時間しか寝ない人もいる。そんな人たちが「ショートスリーパー」と呼ばれる。米国睡眠医学会の定義では、睡眠時間が6時間未満かつ健康で、睡眠に対して不満を抱えていない人をショートスリーパーとしている。
「なぜ、ショートスリーパーが存在するのかは、わかりません。ただ、健康であれば問題ないはずで、ショートスリーパーは寿命が短い、といったエビデンスは私が知るかぎりありません」