ドラマ「フェルマーの料理」で、念願の料理人役に初挑戦する俳優の高橋文哉。デビューから4年。常に自分なりのやり方で、努力を重ねてきた。朗らかな話しぶりからは、探究心旺盛で、飾らない素顔が見えてきた。AERA 2023年10月9日号の記事より。
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――10月20日スタートのTBS系金曜ドラマ「フェルマーの料理」で、数学的思考で料理の世界に挑む青年を演じる。調理師免許を持ち、料理人を目指していた高橋自身の人生とリンクする役柄だ。
高橋文哉(以下、高橋):コック服を着てお芝居ができることには純粋に喜びを感じますし、自分がかつて目指していた職業だからこそ、感じられる楽しさや嬉しさといったものがあるなと思っています。
10代の頃、料理について勉強をしたり、アルバイトをしたりするなかで感じていたのは、「100人いたら100通りの包丁の持ち方やフライパンの振り方がある」ということ。中華料理店でアルバイトをしていた頃は、「あの人の塩の振り方は特徴があるな」「中華鍋の振り方が違うな」とよく観察していたんです。
「フェルマーの料理」で僕が演じる北田岳は、普段は内気な性格だけれど、数学や料理に対しては、天才的な思考でアプローチしていく役なので、岳が無駄なく完璧にこなしていく感じや、そうしたことを無意識に行っているお芝居を、料理を通じて学んだ経験を生かし表現していけることに楽しさを感じます。
俳優の道で生きていく
――料理人を目指していた自分が、俳優に挑戦する。大きな方向転換であり、覚悟を伴うものではなかったのか。
高橋:「料理の世界に進んでいたら、今頃自分は何をやっていたのだろう」と考えることはあります。
僕が上京するのと同時期に東京にやってきて、修業を始めた友人のなかには、1年目で皿洗いをし、2年目で包丁を握れるようになった人もいれば2年目でも皿洗いを続けている人もいました。僕は俳優1年目で「仮面ライダーゼロワン」に主演させて頂いたので、そこで基礎を叩き込んでいったことを考えると、業界によって色は違っても、歩んでいるステップとしては同じだな、と。
「もし料理の道に進んでいたら、いまどんな立場にいるのかな」と想像することはありますが、「仮面ライダーゼロワン」の放送が始まってからは「この道で生きていきたい」と思うようになっていました。