AERA 2023年11月9日号より

 大学時代は中国語サークルに入り、中国を旅したことも。

「旅が好きで、番組の企画書にもよく出します。この『アジアン・ジャパニーズ』は20代前半に手に取った本です。この本に出てくる若者たちのように恋愛や進路でもやついていたし、影響されて旅をしていました。『八丈島流人銘々伝』は八丈島に行った時に現地で買った本です。私は市井の人のリアルな生き様に興味があるのですが、明治以前となるとなかなかない。しかし八丈島へ流罪となった方たちは、罪人とされたがゆえに取り調べを受け、大量の住民の半生が記録されている。貴重です」

 そして高橋さんいち推しの漫画が『へうげもの』。

「大好きな歴史ギャグ漫画です。強いものが勝つ戦国時代に主人公は武人としての強さがない。なら面白いことを追求し、へうげて(おどけて)生きようとした古田織部の気持ちに共感します。人生ままならないからこそ、面白さや笑いを見つけたい。全ての番組作りで私が意識していることです」

(編集ライター・江口祐子)

高橋弘樹さんセレクト5冊

『※ぼく東綺譚』永井荷風/岩波文庫 ※さんずいに墨の異体字

明治から昭和にかけて活躍した文豪、永井荷風の最高傑作。古き良き江戸情緒と美しい文章を楽しみたい

『李白詩選』松浦友久編訳/岩波文庫

中国の唐代の詩人・李白の主要作品120首を厳選。ダイナミックで映像的な詩のほか酒にまつわる詩も人気

『アジアン・ジャパニーズ』小林紀晴/新潮文庫(※)

90年代、アジアを旅する日本の若者の姿を写真と文章で綴った著者の衝撃のデビュー作。切なさ満載の一冊

『八丈島流人銘々伝』葛西重雄・吉田貫三著/第一書房(※)

主に江戸時代、八丈島に送られてきた流人たちの記録。罪状もさまざまだが、現地でたくましく生き抜く姿も

『へうげもの』(全25巻)山田芳裕/講談社

信長・秀吉に仕え、千利休に学び「わび」の道に進んでいく主人公。物欲と出世欲の間での葛藤も見どころ

AERA 2023年10月9日号より抜粋