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「そのためには、消費税を全廃することが一番確実です。消費税をゼロにすれば、実質賃金は5~6%プラスになります。そうなればお金が消費に回り企業の売り上げが増加し、企業は活力を取り戻しますから、賃金を支払う余力が出てきて最低賃金も上がります」
森永教授は、そもそもこの30年近く日本の賃金が上がらなかったのは、消費税が原因だという。消費税が導入されたことで消費が冷え込み、それに伴い企業の売り上げが落ちた。その結果、企業は人件費を上げることができなくなった、と。
「消費税をゼロにすると、地方税を含め年29兆円近い税収が吹き飛びます。しかし、安倍政権下の20年度に日本は80兆円の基礎的財政収支の赤字を出しましたが、財務省が心配した国債の暴落も円の暴落も、ハイパーインフレも起きませんでした」(森永教授)
ただ、一度に消費税をゼロにすると混乱が起きるかもしれない。そこでまず10%から5%に下げ、3年後にゼロにする。そうした道筋を政府は国民に示し、二度と消費税は創設しないと約束する。そうすれば国民も、安心してお金を使うことができると森永教授。そしてこう続ける。
「同時に、全ての国民に一定額を定期的に支給するベーシックインカムも導入するべきだと考えています。金額は、1人月7万円です。不要になる基礎年金や失業保険を廃止すれば、必要な財源は70兆円ほどになります。消費税の廃止を含めて100兆円の赤字が短期的には出ますが、その後の税収増で赤字幅は減少していくでしょう」
前出の野口名誉教授は、賃上げには、今の状況を逆転させること、つまり企業が新しいビジネスモデルをつくり技術革新を行い、生産性を高めることだと提言する。
「特に情報産業の生産性を上げることです。日本には90年代のIT革命以降の世界の大きな変化に、対応できる企業がありません。最近では、生成AIに象徴されるAI技術です。これらに対応できるかどうかが課題です」
そのためには、人材の育成が不可欠と、野口名誉教授は言う。
「人材の育成は教育機関の役割です。ただ、日本の大学が養成しているのは、依然として古いタイプのエンジニアです。日本の大学教育の構造改革を行い、そこで高度な専門性を持った人材を育て、新しいタイプの産業や企業をつくっていく。こうして企業の稼ぐ力、生産性を上げることでしか賃金を上げることはできません」
誰もが安心して暮らせる賃金を得られる社会へ──。課題は多いが、歩みを進めなければいけない。(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年10月9日号より抜粋
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