AERA 2023年10月9日号より

実家なので家賃はいらないが、生活はカツカツ。月の食費は2万円以内に抑え、旅行もほとんど県内だという。

 そんな中、ガソリン代が上昇していった。女性は、子どもの保育園への送り迎えや通勤に車は手放せない。しかし、少し前まで月2万円程度だったガソリン代が、今では月3万円近くかかる。交通費は支給されないので、そのまま家計を圧迫する。女性は言う。

「地方でもお金がかかります。もう少し補助がほしいです」

 社会保障が専門の、静岡県立大学短期大学部の中澤秀一准教授は、「最低賃金は地域間格差も是正する必要がある」と指摘する。かつては地方と都市では生活費に差があり、地方は都市と比べ生活費はかからなかった。しかし今は、実態に合わなくなっている、と。

「地方は家賃が安くても、車が必需品で維持費がかかります。対して都市は、家賃が高くても、電車やバスなど公共交通が発達しているので交通費は安く抑えられます。家賃と交通費がトレードオフ(相反)の関係にあるため、地方と都会とで生活費にほとんど差が生じません」(中澤准教授)

 今回の改定で、最低賃金の最高額は東京の1113円、最低額は岩手の893円。差は220円で、年間約42万円の賃金格差になる。

「この差が何を生み出すかと言えば、人口の流出です。より良い生活をしたい人は、都市に行きます。時給は全国一律にすることが重要です」(同)

AERA 2023年10月9日号より

日本の賃金が上がらない大きな原因は「消費税」

 8月31日、岸田文雄首相は、新しい資本主義実現会議で最低賃金は「30年代半ばまでに全国平均が1500円となることを目指す」と表明した。時給1500円だと、週40時間働いて年収300万円程度の水準になる。

 中澤准教授は、最低賃金1500円の実現には、中小企業への支援と社会保障をセットで取り組むことが重要だと話す。

「中小企業の支援策として、すでに業務改善助成金がありますが、申請の仕組みが煩雑であまり利用されていません。使い勝手のよい支援策を実施し、同時に教育費や家賃補助、児童手当の増額といった社会保障を充実させる。支援と社会保障の組み合わせで、生活が成り立つ仕組みづくりが必要です」

 経済アナリストで独協大学の森永卓郎教授は、「最低賃金1500円はすぐにも実現することが重要」として、次のように提言する。

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