「アメリカの時計」のシーン(撮影・宮川舞子)

 この戯曲にはアメリカ現代史を彩る用語がたくさん出てくる。「ジャズエイジ」「ベーブ・ルース」「ウォール街」「ゼネラル・モーターズ」「ジョン・Ð・ロックフェラー」「マルクス主義」「マーク・トウェイン」「ルーズベルト」……。

 その中で目についた名前が「ヘミングウェイ」だった。彼はフィッツジェラルドとともにロストジェネレーションとしてタフな時代に新たな文学の地平を拓いた。オセロゲームで白と黒が入れ替わるように時代はあっという間に変わってしまう。どんな出来事にも自分を保ち、状況を俯瞰して冷静にチャンスの到来を待つ若い群像の存在も想起した。

 ステージのラスト、未曽有の危機を救済したとされるルーズベルトについてのこんなセリフが印象に残った。

「実際、彼は保守的で伝統的な人間だった。次々に訪れる緊急事態が彼を左に突き動かしたのだ。『革命』という言葉が美辞麗句ではなかった時代。(略)全てが彼の意図だったかは私にはわからない。なぜそうなったのかも正確にはわからない。でも私はこう考えている。その信じる心こそがアメリカ合衆国を救ったのだと」(「悲劇喜劇」9月号掲載)   

「アメリカの時計」のシーン(撮影・宮川舞子)
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