台湾の蔡英文総統

 岸田文雄首相が行った内閣改造では、54人の副大臣・政務官がすべて男性だったことに驚きの声が上がった。トップが女性の台湾は、蔡英文総統をはじめ閣僚級7人が女性。単純に比べられないが、日本の副大臣・政務官クラスには、20人以上の女性が選ばれている。そもそも立法院(国会)の議員の人数に占める女性の割合が高いのだ。ただ、その背景は、女性が社会進出しやすい状況にあるというわけではなさそうだ。

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 2020年の立法委員(国会議員)選挙の当選者は113人中、女性は47人(前回より9.3%増)、男性は66人(前回より5.7%減)で、女性の割合が初めて4割を超えた。

 地方議員レベルでも女性は増え続けている。2022年11月の統一地方選挙で、新たな直轄市議、県議、市議、郡・町・市民代表など約3千人の女性代表が選出された。内政部(総務省)の統計では、当選した女性の割合が直轄市議は約40%、県市議が約36%、郡・町・市民代表が26%だった。いずれも過去20年間で最も高い割合になった。

「婦女保障名額」とは

 立法委員の女性の数を確保することを義務づける「婦女保障名額」という規約もある。立法委員選挙のうち比例代表で選出される議席は、「女性を50%以下にしてはいけない」という条項である。これは「クオータ制」と呼ばれ、マイノリティーへの格差是正をめざすもので、先進国を中心に100以上の国・地域が採用している。

 台湾がクオータ制を採り入れた経緯に詳しい、台湾大学政治学科の黄長玲教授によれば、きっかけは1996年、台湾初の総統直接選挙を経て、民主化が進んだ李登輝政権のもと、全土の地方議会にクオータ制を採り入れる法改正が実現したことだという。

 議会の男女格差の縮小を求めていた民間団体が、当時野党の民進党に圧力をかけ、1996年に党の候補者の4分の1を女性にする方針を採用させた。さらに、李登輝政権で生まれた女性初の内政部長(総務相に相当)だった葉金鳳氏にクオータ制の導入を訴えたという。

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台湾の女性議員が考えていること