とはいえ、女性が議員として活動することは、決して簡単ではないという。
「女性は子供や家庭の面倒をみることも要求されるため、政治活動だけに没頭できる男性よりキツいです。1日48時間分、働かなくてはいけないんです。『女だからダメだ』と言われるのをはねのけるために、家庭もケアしながら結果を出さなくては評価されない」
林さんはそう話し、こう続けた。
「台湾の女性議員たちは、ボランティアなど人に奉仕する仕事から頭角を現す人が多いですね。男性のように強烈な指導力を発揮するかどうかは別として、ソフトなイメージで外堀を埋めていく、という手法が効果を上げるようです」
林さんには子供が3人いる。選挙に出ることに対し、家族全員から、
「個人攻撃などをされて傷つく姿を見たくないし、自分で商売もしているのに、なぜそれをやめてまで社会へ奉仕する必要があるのか?」
などと反対されたという。
「台湾の女性は政治参加の途上」
前出の黄教授は女性議員と保障枠の問題をこう話す。
「(台湾では)政治参加の途上で、女性は男性よりも多くの障害に直面します。女性は社会的に、結婚と出産への期待が含まれますから、女性議員は独身者の割合が高い。『子育てに忙しくて、公務に支障が出るのでは?』といった意地悪な質問も避けられる。ただ、未婚の蔡英文総統は『(子供を産んでいないから)親心をわかっていない』などと批判を受けることもある」
そうした面があることを踏まえたうえで、クオータ制の意義についてこう語る。
「女性政治家はセクシュアルハラスメントにさらされる可能性も高い。2019年、民進党の最年少立法委員候補である賴品妤さんは、出馬を発表した直後、水着の写真を暴露され、性的な意味を持つ言葉で侮辱された。女性はそういう環境がわかるから、政治活動に興味があってもちゅうちょしてしまう。クオータ制、つまり保障枠の設置は、そんな女性の意欲を高めることに役立っています」
(広橋賢蔵)