「時代の流れ」を感じた葉氏は、地方議会の各選挙区で当選者の4人に1人は必ず女性に割り当てる改正案を内閣として提出し、成立させた。民間団体に押されて女性候補者を増やした民進党は、女性を重視する政党というイメージを世論へ広め、国民党へ圧力をかけた形になったという。
各党はこれ以降、優秀な女性の発掘に努め、多くの女性候補が男性候補にも競り勝った結果、優先枠を使わなくても当選するケースが続出してきた。
地方議会で強まった女性の政界進出の動きは2005年、立法院の比例区の男女比を5割ずつとする選挙制度改革へと発展した。2008年の総選挙から加えられた条項で、113議席の約3割にあたる比例区の34議席が男女同数になった。そして2020年には4割の立法委員が女性で占められるまでになったわけだ。
名家を背負っての政治活動
そんなクオータ制のなかから生まれた立法委員で民衆党の呉欣盈さん(48)に話を聞いた。呉さんは台湾の企業グループである「新光集団」の保険部門の副CEOのキャリアを持つ。新たな政党である民衆党に望まれ、議員になった。
呉さんのいる議員会館を訪ねると、外資系企業のように英語でのミーティングが声高に響いていた。そんななかで「私の父は早稲田、母は明治なんです」と片言の日本語で話してくれた。
立法委員になってからも仕事への姿勢は、ビジネスの延長線上になっているようだった。
「私の活動が、台湾の政策になると思ったら、達成感がある」
呉さんの場合は、名家を背負っての政治活動という一面もあった。母方の祖父も政治と関わっていて、おじの呉東昇氏は李登輝元総統を中核した政党「台湾団結連盟」から立法委員になっている。
一方、地方で議員活動に力を入れる女性もいる。
「女性は、男性のとは違う包容力や優しさで、より民間に対していい仕事ができるはず」
そう話すのは、5年前に台北市内で初めて選挙に出馬して里長(地区代表)に当選した林佩燕さん(55)。同地区で長期間里長を務めていた父が高齢になり、その地縁をバックに立候補したという。