そして、企業の粗利益の対前年増加率も下がってきている。2022年1‐3月期に5.8%であったものが、4‐6月期に5.7%、7‐9月期に5.2%、10‐12月期に3.1%になった。

 したがって、春闘での賃上げが高くても、それは、2023年に限ったものであり、今後継続的に賃金が上昇していくことにはならないだろう。

零細企業では、粗利益が減っている

 以上で見たのは、法人企業全体だ。ところが、企業規模別に見ると、大きな違いがある。

 大企業(資本金10億円以上の企業)では、売上高の増加額が原価の増加額を大きく上回っている。ところが、資本金がそれ未満の企業についてみると、両者はほぼ同じであり、零細企業(資本金2000万円以下の企業)の場合には、原価の増加額の方が大きくなっている。このために、粗利益が減少しているのだ。

 なお、2022年において、大企業より中小企業の賃上げ率が高かったことは、東京商工リサーチの2022年度「賃上げに関するアンケート」調査でも確かめられる。

 賃上げ率は、「3%未満」が73.1%(大企業76.8%、中小企業72.7%)に対し、「5%以上10%未満」は6.2%(大企業5.2%、中小企業6.3%)となっており、中小企業の上昇率が高かった。

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実質賃金は上昇しない