粗利益は増加したが、賃金は上がらなかった
法人企業全体(金融機関を除く)について見ると、2022年の粗利益は、前年より4.95%増えた。ところが、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。
したがって、企業には賃上げを行なう余力があったと考えられる。仮に粗利益に対する給与・賞与総額の比率を従来の値に保つとすれば、給与・賞与総額の伸び率が5%近くになっても不思議はない。2023年の春闘での賃上げが高かったのは、こうした事情によるものだ。
原価の上昇を転嫁したため、粗利益が増えた
企業の粗利益はなぜ増えたのか? それは、輸入物価の高騰による原材料価格の高騰を、売上に転嫁したからだ。2021年から22年にかけて、売上原価が81.6兆円増加したのに対して、売上高が97.5兆円増加した。
このようなメカニズムによる粗利益の増加は、2022年に特有の現象だと考えられる。2023年以降においても22年と同じような物価上昇が生じるとは考えにくい。したがって、2022年と同じメカニズムによる粗利益の増加が生じるとは考えられない。
実際、円ベースの輸入物価の対前年上昇率は22年の9月にピークとなり、その後は低下している(輸入物価の上昇率は9月には48.5%となったが、12月には前年同月比22.8%となった)。