AERA 2023年10月2日号より

「本格配信を始めた2010年末は、リスナーが減り、ラジオ受信機の出荷台数が激減していました。そこで、危機感を抱いたラジオ局が垣根を越えて協力し、パソコンやスマホでも聴ける環境を作り、新たなリスナーを獲得しようと考えたのです」

 本格配信から約3カ月後、東日本大震災が発生。ラジオが持つ災害時の情報ツールとしての強みが見直された。ラジコも首都圏と関西圏の民放13局の放送を聴取地域の縛りをなくし、期間限定で全国に配信。この動きは自分の今いる地域以外の放送も聴けるエリアフリーサービスを14年に開始する布石になった。

 また、ラジコのアプリは他のサービスに比べ、消費電力やパケット量の負荷がかかりすぎないことが分かっており、災害時にも活用されている。

 現在のエリアフリーは、有料のプレミアム会員向けのサービスだ。プレミアム会員数は年々、増加し、22年8月には100万人を突破した。

「放送から7日間以内の番組を規定の聴取可能期限であれば、好きな時間に聴けるタイムフリーという無料サービスもあります」(坂谷さん)

 これらのサービスは、ラジオ局の制作に影響を与えることにもなった。放送エリア以外に住んでいたり、深夜番組を昼間に聴いたりと、ラジオ受信機が中心の時代とは違うリスナー層が増えたからだ。

「ラジコは年代や端末別、どの番組のどの時間帯がよく聴かれているか、分単位で細かくデータを収集しています。それらのデータもラジオ局は番組制作に積極的に活用されていますね」(同)

 ラジコの利用者は、平均年齢が40代半ば。プレミアム会員に限れば、男性が56%、女性が44%の割合だ。人気ジャンルはトークやバラエティー、音楽の番組が上位を占めている。

「将来的にはラジオ局が制作する放送以外の番組、たとえばpodcastなども聴けるようにしたいという構想もあります。ラジオ局はバラエティーに富んだ番組を配信しています。ラジコアプリのホーム画面に触れていただければ、きっと好きな番組が見つかると思います」(同)

(ライター・角田奈穂子(radiko)、福光恵(「村上RADIO」))

AERA 2023年10月2日号より抜粋

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