災害に強いメディアとして再認識されたラジオ。コロナ禍にはテレワークのお供に聴く人も増えた。リスナーとの距離をグッと縮めたのは、便利に聴ける環境作りにあった。AERA2023年10月2日号より。
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ラジオの重要な要素である音楽の楽しみ方の変化も、今のラジオの強みに繋がっている。聴き放題のサブスクサービスが広がり、新旧のヒット曲が同列に。60年代の反戦音楽も、過去のものではなく、リアルタイムのヒット曲と並ぶようになった。
「ウクライナの戦争がおこったときも、60年代の反戦音楽を(何の先入観もなく)リアルタイムのヒットを知らない世代にも聴いてもらえる。これもラジオDJにとってはすごく有効なことだし、ラジオにとっても有効なことですよ」(TOKYO FM「村上RADIO」のゼネラルプロデューサー・延江浩さん(65))
またradiko(ラジコ)などのアプリ配信も手伝って、進化を続けるラジオ。では延江さんの考える、ラジオの次の一手は?
「なんか、コミュニティFMじゃないかなと思っていて……」
もとは災害時のライフラインとして活用されるFM局。聴けるエリアも限られていたが、これが「アプリの登場で弾けつつある」(延江さん)とか。
ラジコで聴き方に変化
ラジオの魅力を見直すきっかけを作ったのは、なんといってもネットサービスのラジコだ。現在、民放ラジオ全99局とNHKラジオ第1、NHK-FM、放送大学を聴くことができる。
ラジコの特徴は、「IP(Internet Protocol)サイマルラジオ」であること。地上波のラジオ番組をネット配信するには、各局の放送エリアのすみ分けや番組で流れる音楽の利用許諾など、多くの課題がある。それらをクリアし、ラジオ受信機と同じようにネットで聴ける環境を作ったのが、ラジコなのだ。
radiko取締役の坂谷温(さかやゆたか)さんは、サービス開始の背景をこう話す。