「村上RADIO」を収録しているスタジオ。写っているレコードは村上春樹さんの私物。「村上RADIO」TOKYO FM/JFN38局ネット、毎月最終日曜19:00~19:55(一部放送局は放送時間が違うこともあります)(写真:TOKYO FM提供)

 災害に強いメディアとして再認識されたラジオ。コロナ禍にはテレワークのお供に聴く人も増えた。リスナーとの距離をグッと縮めたのは、便利に聴ける環境作りにあった。AERA2023年10月2日号より。

【図表】ラジコプレミアム会員数の推移がこちら

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 ラジオの重要な要素である音楽の楽しみ方の変化も、今のラジオの強みに繋がっている。聴き放題のサブスクサービスが広がり、新旧のヒット曲が同列に。60年代の反戦音楽も、過去のものではなく、リアルタイムのヒット曲と並ぶようになった。

「ウクライナの戦争がおこったときも、60年代の反戦音楽を(何の先入観もなく)リアルタイムのヒットを知らない世代にも聴いてもらえる。これもラジオDJにとってはすごく有効なことだし、ラジオにとっても有効なことですよ」(TOKYO FM「村上RADIO」のゼネラルプロデューサー・延江浩さん(65))

 またradiko(ラジコ)などのアプリ配信も手伝って、進化を続けるラジオ。では延江さんの考える、ラジオの次の一手は?

「なんか、コミュニティFMじゃないかなと思っていて……」

 もとは災害時のライフラインとして活用されるFM局。聴けるエリアも限られていたが、これが「アプリの登場で弾けつつある」(延江さん)とか。

ラジコで聴き方に変化

 ラジオの魅力を見直すきっかけを作ったのは、なんといってもネットサービスのラジコだ。現在、民放ラジオ全99局とNHKラジオ第1、NHK-FM、放送大学を聴くことができる。

 ラジコの特徴は、「IP(Internet Protocol)サイマルラジオ」であること。地上波のラジオ番組をネット配信するには、各局の放送エリアのすみ分けや番組で流れる音楽の利用許諾など、多くの課題がある。それらをクリアし、ラジオ受信機と同じようにネットで聴ける環境を作ったのが、ラジコなのだ。

 radiko取締役の坂谷温(さかやゆたか)さんは、サービス開始の背景をこう話す。

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