「これまでにアプリ用の写真を2700人撮りました」。いまは1時間1万5千円で仕事を請け負っている。タイムチケットで撮影した人が、後に佐藤さんの結婚相談所に相談に来る好循環も生まれているという。
タイムチケットによると、仕事は様々だ。趣味や聞き上手であることを生かして、占いや話を聞く仕事をしている人もいる。企業の社員が就職や転職をしたい人と話すOB、OG訪問のような案件もあるという。
副業効果に期待
大企業でも副業を認める企業が増えている。経団連によると、副業を認める5千人以上の企業は、20年に50.6%だったのが、22年には「認めている」「認める予定」の企業が83.9%に増えた。
パナソニックグループは昨年から働く「時間と場所」の選択肢を拡大している。一日の最低労働時間を撤廃し、副業などのキャリア開発や育児・介護のために週休3日で勤務することもできるようになった。
以前は、副業を個別に認める場合はあったが、一部の会社で業務委託型や他社雇用型の副業を解禁した。事業会社等のグループ9社の社員5.8万人のうち約190人が副業している。
実際に副業が本業に生かされた事例もある。ハード分野の光学設計開発を担当する社員が、趣味である3DCG(3次元の立体空間で描かれるコンピューターグラフィック)を実現するプログラミングやアプリケーションの勉強会に参加して、関連の書籍を執筆する副業をしている。副業で得た知識をもとに、本業の光学設計のシミュレーションソフトを開発することができ、本業で苦労していた開発の課題解決につながった。
副業制度の運用では、健康管理に留意し、過重労働にならないよう必要に応じ面談を行う。
傘下企業の人事部門の主幹、森洋平さんは言う。
「働き方の選択肢の多様化が狙いです。自立したキャリア形成を支援し、最終的には社外副業を通じて習得したスキル・知見や経験を、業務推進に生かせる効果が大きいと期待しています」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年10月2日号より抜粋