一方で、このような大きな変化はビジネスチャンスでもあります。だからこそ多くの日本企業は積極的な生成AIの利活用に動いているし、日本政府も生成AIを利活用して国の活力を増していくという極めて前向きな方針を打ち出しているわけです。
近い将来、「AIの時代」がやってくることは不可避と思われます。そうなれば、生成AIがあらゆる局面で使われ得る以上、およそ企業活動全般に影響が生じ得ることになります。
既に生成AIの利活用に慣れてきたビジネスパーソンは、業務のかなりの部分を生成AIに代替させて、作業効率を高めることに成功しています。今や、そういうことが実現可能なレベルのAIサービスがどんどん提供されています。その意味では、もはや「AIの時代」に入っていると言ったほうがよいかもしれません。
ただし、生成AIの利活用においては、入力する情報にしても出力する情報にしても、著作権やプライバシーなどいろいろな法的な課題が伴います。そして、プロンプト入力場面、生成・利用場面、処理学習場面など、利用シーンにおいてもさまざまな留意点が発生します。なので、生成AIにかかわる法的な課題について、特定の業種、職務のビジネスパーソンだけでなく、学生を含め、あらゆる人たちが知っておいたほうがよいと思い、生成AIの相談に日々触れる弁護士たちが結集して、このたび朝日新聞出版から『入門書』を上梓しました。本書は、主に法実務の視点から、生成AI(特に対話型AIと画像生成AI)に関連する法律や実務的トピックを幅広く紹介することを通じて、基礎的な知識から大まかな視座までを得られる内容になっています。
ビジネスパーソンにとっては、生成AIのリスクを知り、生成AIの利用に関してどのような点が法的な課題となるかを把握することは、仕事をする上での素養、基礎知識として押さえておくべきもの、すなわち標準的なリテラシーの一つとなっていくはずです。これから生成AIが存在することを前提とした社会人生活に突入していく学生のみなさんにとっても、同じことが言えるでしょう。本書を通じ、多くの方が「AIの時代」に必須のリテラシーを得ていただけることを願っています。