「2023年に入って、生成AIに関する相談が急速に増えています」
こう話すのは『ゼロからわかる 生成AI法律入門 対話型から画像生成まで、分野別・利用場面別の課題と対策』の編著者で、日々生成AIにまつわる依頼・相談に携わる弁護士の増田雅史さん。現在、対話型AIである「ChatGPT」に代表される生成AIについては、世界中でポジティブな面とネガティブな面、両面から盛んに議論されている。日本企業はその利活用にポジティブなように見えるが、実情はどうなのか。最新の動向を踏まえつつ、今日のビジネスパーソンに求められる「AI時代の法務リテラシー」について増田さんに解説してもらった。
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生成AIを企業活動で利用する動きは着実に広がっている
日本企業からの生成AI関連の相談で特に多いのは、社内業務で生成AIを使う際の法律面のリスクを知りたいというもの。社員からChatGPTを使いたいという要望が出ているが、導入して大丈夫か。あるいはもう使っている社員がいて、放っておくとよくないのではないかといった内容です。
生成AIを使っていくことを決めた企業も多く、様々なリスクを踏まえた上でどんな社内ルールを整備していくべきかという相談も同じくらい寄せられています。
また、生成AIの提供企業が示している利用規約などの法的ドキュメントのうち、サービス利用上の制約や入力データの利活用などの点についてどうリスク評価すればよいかという相談も少なくありません。
他にも、コンテンツ関係ですと、画像生成AIを使って出力されたものを自社のゲームアプリの中で使った場合に著作権は保護されるのか、といった相談もあります。
コンテンツビジネスの関係者の中では、特にクリエイター側の方々は、生成AIを「脅威」と捉える傾向が強い印象です。作品の創作作業に使うべきか否か、それによって仕事が奪われるのではないかといった議論が盛んに行われており、実際、突然契約を打ち切られたとか契約条件が変わったとか、そういう話も耳にします。今後コンテンツ分野では、こうしたトラブルや紛争が増えると予想されます。