個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は「連載開始から5年、書いていなかったこと」を告白する。
* * *
今まで当コラムで、僕はさんざん己の身を切り売りしてきました。
顔がデカイ。足がデカイ。足が短い。静電気が怖い。方向音痴。折り畳み傘がうまく畳めない。道で人とうまくすれ違えない。気が小さい。地に足がついてない。すぐテンパる。精神年齢はおよそ6歳。妻は耳かきが大好き。妻に「君の顔って、田んぼのあぜ道に似てるね」と言われた。妻に「君の顔って、便器に似てるね」と言われた。そんな妻が僕は大好き。
最後ヤケクソでノロケた感がぬぐえませんが、社会現象や時事問題などに関しては然るべき方々がお書きになるだろうし、何よりそういったことを分析する能力が僕には全く備わっていないので、とにもかくにも、僕は自分の身を切り売りしてきたように思います。
当コラム連載開始から5年。さすがにもう売るものがないくらい、出尽くしたと思っていたのですが、1つ、書いてなかったことがありました。
僕、泳げないんす。
切り売りするにしても、あまりにもどうでもいい情報ではありますが、いやホント、僕、泳げないんす。
平泳ぎなら、おそらく15メートルくらいは泳げる(というか、なんかバタバタ手足でもがいてたら、多分15メートルくらいは進むであろうという程度)と思うんですが、クロールなんぞは、多分2メートルくらいで沈んでいきます。
僕の身長は181センチですから、ただ水面に倒れるだけで181センチは稼げるのに2メートルくらいで沈むということは、実質19センチしか泳げないということです。
「泳げない」という表現を使うのもおこがましいくらいで、なんでしょう、「沈む」。沈む感じ。ただただ沈みゆく。丸太がドバーンと水面に倒れて動かない感じ。丸太は沈まないのでまだいいですが、二朗丸太は倒れたのち、そのまま沈んでいきます。少しもがいたのち、沈んでいきます。19センチだけ進んで。
背泳ぎなんてもっての他です。なんですか背泳ぎって。意味が分かりません。おとといきやがれと言いたい。