最後は物静かなイメージの強い選手の野球人生初の退場劇を紹介する。巨人時代の谷佳知だ。

 07年9月1日の横浜戦、7対7の7回2死満塁のチャンスに、谷はショートの深い位置にゴロを転がし、送球がバウンドする間に一塁を駆け抜けた。執念の内野安打で8対7と勝ち越したかに思われた。

 ところが、有隅昭二一塁塁審の判定は「アウト!」。珍しく興奮した谷は同塁審の胸を突いて、オリックス時代も含めて初めての退場処分を受けた。

 納得のいかない判定に、西岡良洋一塁コーチは「何であれがアウトなの?選手の気持ちもわかってほしい」とアピールし、原辰徳監督も「本人も強い確信があったし、私も(セーフ)そうだった」と谷を擁護した。

 一方、有隅塁審は「試合後に審判員で(映像を見ながら)話しました。僕のジャッジなんで、反省としてはいろいろあります」と言葉を濁したが、リクエストのない時代は、審判の判定は絶対だった。

 もしリクエスト制度がもっと早く導入されていれば、これらの退場劇の大半が「なかった」かもしれない。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。
 

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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