右肩下がりの経済、SNSの普及による人間関係の複雑化──。誰もが「7040」「8050」の当事者になりうる時代だ(写真:gettyimages) ※写真はイメージ
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 高齢の親と中高年のひきこもりの問題が、社会課題として認識されるようになって数年が経つ。高度経済成長期に社会に出た親と就職氷河期を経験した子、7040世代もまた、この問題に直面している。解決策はどこにあるのか。AERA 2023年9月25日号から。

【図】現在の外出状況になった主な理由がこちら

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 いま、15~64歳でひきこもり状態にある人は全国で推計146万人にのぼる(内閣府の2022年度「こども・若者の意識と生活に関する調査」)。子どもから中高年までを同時に調べた初の全国調査で、自宅や自室からほとんど出ない状態だけではなく、コンビニや趣味の時だけ外出する人も含めた推計で、約50人に1人が該当する数字だ。

「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が当事者家族344人を対象に行った22年度調査では、当事者の平均年齢は35歳。調査を開始した02年度の26.6歳から上昇し、ひきこもり期間は平均9.6年(前年度調査では9.2年)で長期化傾向にある。

「ボリュームゾーンは40代です。親は60~70代で『7040』問題の当事者たちです」

 と話すのは、東京・巣鴨のNPO法人「楽の会リーラ」理事長の市川乙允さん(76)。娘(46)が中学生の時に不登校になったのをきっかけに、20年以上、ひきこもり当事者と家族の支援活動を続けてきた。市川さんはこう指摘する。

「インターネットの普及で、全てのスピードが速くなって効率重視の社会になった気がします。少しでも乗り遅れたら、排除されてしまう。20年前は子どもの『不登校』の悩みでしたが、今のひきこもりは誰の身にも起きうる問題になっている」

 多くの悩む親と向き合ってきた市川さんは、「7040」世代特有の課題を感じている。

「親世代は70代でまさに団塊世代。父親は仕事人間だった人が多く、母親も世間体を気にして、働くことが当然だという価値観が強い。それを押し付けては親子が断絶するだけ。まず親がプライドを捨てることです。子どもは動きたくても、動けないことを理解し、じっと見守ることが不可欠です」(市川さん)

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