学校の友人関係でつまずいたり、就職活動がうまくいかなかったり、ブラック企業で身体を壊したり、ママ友付き合いに疲れてしまったり。右肩下がりの経済状況で先が見通せない毎日なのに、SNSを開けば、キラキラした投稿ばかりがあふれ、自己肯定感がぐらぐら揺らぐ──。ひきこもりになる引き金は、驚くほど身近にあふれている。
さらに、コロナ禍で外出が制限されたことをきっかけに鬱状態になり寝込んだり、家族とずっと一緒に過ごさなければならないことがストレスになったりするリスクも加わった。
「『ひきこもり』のバリエーションが増えました」
と、ファイナンシャルプランナーの柳澤美由紀さんは指摘する。柳澤さんは、約10年前から「7040」「8050」の親世代に、親亡き後のライフプランを提案する「働けない子どものお金を考える会」に参画してきた。変化を感じている。
「10年前は、部外者である私はもちろん、親と話すことも拒否して自室から出てこないパターンがほとんど。最近はひきこもっている当事者と直接会えることが増えました」(柳澤さん)
柳澤さんらが作成するライフプランは、子どもが働かない前提で、親の資産を整理し、遺族年金や障害年金、生活保護の受給なども含めて検討したものだ。
「本人から『私でもできる仕事はないですか?』と聞かれることもあり、やる気がある人が多い印象です。本当にちょっとしたことで社会に出るきっかけを失い、それが長期化しているだけなんだなと感じます」(同)
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年9月25日号より抜粋