むしろ、何回見ても楽しめるような厚みのあるストーリーを提供することで、口コミやSNSなどで話題が拡散していくことが期待できるし、見逃し配信やサブスクでも見てもらえるようになる。さらに言えば、映像コンテンツを海外に売り出す際にもそこが強みになる。

 余談になるが、『VIVANT』を見ていて驚かされたのは、一般的には放送禁止用語とされている「とある単語」が、何のためらいもなくサラッと何度も使われていたことだ。

 業界内では知られた話だが、放送禁止用語とは単なる放送局の自主規制に基づくものであり、明確なルールがあるわけではない。つまり、覚悟さえあれば使っても構わないのだ。『VIVANT』の制作陣は当然、覚悟をしている。だからこそ、そこを押し通すこともできたのだろう。これ自体は本質とは関係のない些末なことだが、こういうところからも制作陣の作品にかける意気込みが伝わってくる。

『VIVANT』は、サブスク時代に適応したテレビドラマの理想的な形を体現した傑作である。きっと最終回の最後の1秒まで私たちを楽しませてくれるだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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