作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は角野隼斗さんの子ども時代の話から始まります。
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大宮:もともと数学も好きだったけど、音楽も好きだったんですか。
角野:音楽はずっと好きでしたね。ピアノを始めたのが3歳でした。母がピアノの先生なんで、自宅にピアノがあって自然に。
大宮:じゃあそういう環境があったわけですね。でも、数学も好きだったっていうのは?
角野:強いて言えば、父親がそっちの興味を刺激してくれて。渋滞しているときとか、ディズニーランドの待ち時間とか、算数の問題を出してくるわけですよ。算数パズルとか、魔方陣のパズルとか、マッチ棒とか。
大宮:へえ、面白いお父さん。
角野:数への興味は1、2歳ぐらいから持ってたらしくて。数字を見ると寄っていったって。駐車場でも車じゃなくてナンバープレートに反応したり、駐車番号をなぞっていたり。
大宮:なぜ東大に?
角野:中学受験をして開成に入ったんですけど。
大宮:開成に? すごいね。
角野:そこから東大を目指すのは、そんなに珍しいことではないですし。
大宮:確かにそうですね。
角野:音大や芸大に行きたいなと思ってたんですけど、そのころ、自分の興味がジャズとかロックとかに向いていたので、音大でクラシックピアノを朝から晩までやって、将来教授か何かになって、みたいなのはあんまり面白くないかなと思って。東大に入っても音楽はできるしな、と。
大宮:それで東大では数学を?
角野:工学部ですね。計数工学科に行って、そこから情報理工っていう大学院に行って。
大宮:何かやりたいことが?
角野:東大に入ったころは具体的なことも考えず、数学が好きだったから理Iに入って、何か音楽系の研究と組み合わせられたら楽しいだろうなと思ってました。
大宮:でもよかったですね、数字と音楽を結び付ける学問があって。社会的にはどう役立つ学問なんですか。
角野:音声を処理する裏側にはあらゆる数学が詰まってますから。
大宮:そうか、なるほど。