道頓堀川にかかる戎橋南側に設置された街頭テレビに見入っていた勤め帰りのサラリーマンやOLらが「やったあ!優勝や!」と歓喜の声を上げ、「六甲おろし」の大合唱。周辺はほとんど通行不能になり、“ミニ甲子園”と化した。

 梅田の阪神百貨店前でも、2000人近いファンが午前1時を過ぎても帰らず、車道に飛び出して車の通行を妨害するなど、“無法地帯”になり、警官が出動する騒ぎになった。

 そんな狂騒状態のなかで、ケンタッキー・フライド・チキン道頓堀店の前に置かれていたカーネル・サンダース像が「バースに似ている」という理由からファンに持ち去られ、胴上げのあと、道頓堀川に投げ込まれる事件が起きた。

 翌年以降、阪神が長い低迷期を迎えたことから、「カーネルの呪いではないか?」という都市伝説も生まれたが、川底に沈んだカーネル像は、23年半後の2009年3月10日、道頓堀川下流で発見された。奇跡的生還をはたしたことにちなみ、修復後は「幸福の象徴」としてKFC関西オフィスに展示されている。

 87年以降の16年間で最下位10度、この間Aクラスは92年(巨人と同率2位)の1度だけと暗黒時代が続いた阪神は、03年、星野仙一監督の下、18年ぶりのリーグ優勝をはたす。

 道頓堀の「かに道楽本店」では、シンボルの巨大カニ看板をファンに持ち去られることを防ぐため、V決定後、店のシャッターを閉め、社員が看板を自主警備。戎橋近くのコンビニも騒動に巻き込まれないよう21時で急きょ閉店し、心斎橋筋の商店街もほとんどの店がシャッターをおろした。

 だが、その一方で、道頓堀川添いの街路灯によじ登ろうとするファンを警備に当たっていた地元商店街関係者が注意すると、「何でやねん。ここは大阪やぞ!」とつかみかかられ、乱闘寸前の騒ぎになるなど、トラブルが続発。大阪府警南署員が「命にかかわる無法な行為をやめてください」とハンドマイクで呼びかけたにもかかわらず、道頓堀川に“Vダイブ”するファンが相次ぎ、その数は5300人に達した。また、戎橋交番には、すりやひったくりの被害者の駆け込みがあとを絶たず、被害届を出す人々が列をなした。

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