史上最も暑い今夏、国連事務総長は「地球沸騰の時代が来た」と述べた。いま地球に何が起きているのか。猛暑のメカニズムを専門家に聞いた。AERA 2023年9月11日号より。
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この暑さはそもそもなぜ、起きているのか。
気候変動を研究している東京大学大気海洋研究所准教授の今田由紀子さんは、「地球温暖化の影響が徐々に増していることは、間違いありません」と指摘する。
極端な高温になるときは、自然現象である高気圧の張り出しが必須の条件だ。どんなに温暖化が進んでいても、それだけで猛暑にはならない。しかし、猛暑を地球温暖化が「底上げしている」ことは確実だと言うのだ。
「地球温暖化の影響が、猛暑など個々の異常気象に対してどの程度あるかを評価する手法を、イベント・アトリビューション(EA)と言います。たとえば『高気圧が強く張り出す/張り出さない』など、さまざまな偶発的な自然現象が起きた地球を大量にシミュレーションし、その上で、そこから『地球温暖化の影響だけを取り除いたシミュレーション』も別途、大量に作る。これらを比較すると『温暖化が進んだ場合の自然現象の発生確率』という形で『差』が見えてきます。その差を『底上げ』と呼んでいます」(今田さん)
EAが始まったのは13年ほど前。その頃から「地球温暖化の影響で、猛暑の発生確率が〇倍になっています」という結果は出てきつつあったという。
「しかし、東・西日本が記録的な高温で7月から9月の熱中症による救急搬送者数が過去最多だった18年のEAでは、もはや倍率の表現が『無限大』になりました。つまり『温暖化の影響がなければ猛暑は起こり得なかった』と。近年このような事例が増えています」(同)
偏西風の激しい蛇行
8月28日の「異常気象分析検討会」では今夏のEAの分析について、高温の発生確率は地球温暖化がなかったと仮定した場合と比べて高く、「記録的な高温を温暖化がさらに底上げした」との見解が示された。