中国恒大集団は8月17日に米連邦破産法第15条の適用を申請した
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 中国の不動産危機が再燃している。中国経済をけん引してきた不動産市場の不調は世界経済をも揺るがしかねない。

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「中国の不動産市場に対する疑念が改めて認識されました」

 中国の大手不動産会社、中国恒大集団が8月17日に米連邦破産法第15条の適用を申請したことを受け、第一生命経済研究所・主席エコノミストの西濵徹さんはこう話した。

 恒大は2年前の2021年に経営不安に陥り、同12月にドル建て債の債務不履行(デフォルト)に陥った。今回の破産申請は米国の資産を保全する狙いがあるとみられている。裁判所が適用を認めれば、米国にある資産の強制的な差し押さえが避けられ、米国内の資産を保護できる。

 ただ恒大の負債総額は昨年末時点で約49兆円にのぼると言われ、外貨建ての債務はこのうちの一部にすぎない。破産法を申請したからといって問題が解決するわけではない。

 西濱さんは続ける。

「破産申請を行ったからといって、会社がつぶれたわけではありません。中国の不動産市場に問題があることは知られてきましたが、それでもやってこられたのは『中国政府は何か手を打っているのではないか』とみられてきたためです。でも恒大の破産申請により、フタを開けてみたら何もしていなかったことがわかった」

 中国の不動産市場は経済成長をけん引してきた。不動産会社や個人が土地の値上がりを前提にお金を借りたり、高値で売って得られたもうけを使って別の不動産に投資したりする形で開発が進んだ。いろいろな試算があるが、中国の国内総生産(GDP)の3割とも言われる規模がある。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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