しかし、値上がりする前提が崩れれば歯車は狂う。国内外の資金の流れに詳しい経済アナリストの豊島逸夫さんは言う。
「不動産は中国の個人が持つ金融資産の7割超を占めると言われます。不動産価格が下がれば、資産を持つ人の消費活動は萎縮する。中国の銀行も、貸出の担保のうち4割は不動産であるとされ、やはり価格の下落によって不良債権が膨らむ恐れがあります」
さらに中国では、不動産の開発は不動産会社だけでなく、「融資平台」と呼ぶ地方政府傘下の投資会社が一緒になって進めてきた。不動産開発で得られる収入は地方政府にとって大事な財源だ。収入が落ち込むと財政も苦しくなる。
中国の経済規模は米国に次ぐ世界2位だ。中国経済のけん引役の不調の影響は、中国だけでなく、ほかの国にもおよぶ。
豊島さんは、恒大の問題が拡大するかは中国政府の対応にかかっていると言う。
「中国政府が不動産会社の救済に乗り出し、その借金を肩代わりするような大胆な対策を行えば、その場はしのげるでしょう。習近平国家主席は強い権力を持っていますから、かなり思い切ったことができるはず。そのため今年や来年などに世界金融危機のような事態に陥る可能性は低いと考えています。ただし、問題が先送りされても、借金が消えることはない。どこかの段階で火種が噴き出すリスクは残ります」