また、思い切った対策が打てるとはいっても、そう簡単ではないという。そもそも、現在の不動産市況の不振を招いたのは政府の融資規制だ。言い出しっぺの政府が問題児とも言える恒大を救えば、モラルハザードを招きかねない。お金を払ったのに建設がストップしているマンションの所有者たちも納得できないだろう。

「習氏は、格差をなくし、みんなで豊かになる『共同富裕』というスローガンを掲げています。もうけを増やそうとして失敗した恒大のような会社に対しては、表面的には強い態度を示さざるを得ません。それでも経済への影響を抑える必要がありますから、国民の不満や問題の影響度を見極めながら、対策を打つタイミングを見計らうことになるでしょう。救済策が成功すれば、やり方しだいでは習氏自身も不動産で損を出した国民から支持を集めることにもつながります」(豊島さん)

 これに対し、相場研究家の市岡繁男さんは「リーマン・ショック級の金融危機が起きる可能性も捨てきれない」と指摘する。

「恒大も、別の不動産開発会社最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)も、問題になっているのはドル建て債務です。中国経済がドル不足に陥っている状況の表れではないでしょうか」

 どういうことか。市岡さんは続ける。

「中国は『一帯一路』を掲げて新興国の多くのインフラ建設に携わってきたものの、うまくいかないケースが目立つ。資金繰りに苦労している可能性があります。また最近では米中両国の関係が悪化し、米国やその親密国との間に距離もできつつある。中国は豊富な外貨準備を持っていると言われてきましたが、外国との取引や、外債の発行が今までのようにうまくいかず、外貨の調達が海外向けの債務に追い付かない状況になっているのかもしれません。今回の問題は、ドル不足のひずみが表面化したとみることもできます」

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