「経済安全」は二の次
だが、習近平はまず「国家安全」を最優先とし、反政府的な「社会安全」を脅かすものがあれば厳しく取りしまり、「経済安全」の優先順位は二の次に置かれた。大物経済官僚はたいていパージされ、経済まで自分が仕切る構えを見せた。
「家は住むものであって、投資のためのものではない」
そんな言葉で、習近平は繰り返し、不動産投資の過熱に不快感を示しブレーキをかけた。それは自身が掲げた、中間層を増やしていく「共同富裕」政策と矛盾することになるからだ。しかし、中国経済は過去30年にわたって不動産経済で成り立ってきた。不動産は上がるものという神話が形成されていたので、人々も借金して資金をつぎこみ、値上がりでキャピタルゲインを得ることが「勝利の方程式」だった。公的機関や民間企業も、借金で購入した土地を担保にさらに借金をする自転車操業的な開発で潤い、経済を回してきた。そこにブレーキをかければ、当然、急激に市場は麻痺する。
不動産不況は当然、消費低迷を生み、経済全体に悪影響を波及させていく。これこそ日本が歩んだ道であり、中国でその兆候は出ている。ゼロコロナの解除後も消費は伸びず、政府も「総需要(消費全体)の不足に直面している」と認める。銀座を闊歩する中国人観光客にもかつてのような購買力は見られないようだ。