かなり逆風が吹いてきた岸田政権だが、それでも首相の座が揺らぐことはない、と伊藤氏はみる。
「安倍晋三元首相の時代、自民党の議員は首相に歯向かうと大変な目に遭うことを骨身に染みました。そのため沈黙を守っています。野党でも、維新は馬場伸幸代表が自党を『第2自民党』と表現するなど、与党と戦う意思は全く感じられません。小沢さんは野党統一候補の実現を求めて積極的に動いていますが、彼の神通力は12年に民主党を離党し、国民の生活が第一を結党した時点で終わりました。まさに与野党共に緊張感が欠如した政治状況が、岸田内閣の延命に寄与していると言えます」
結局のところ、政治家人生の重要局面で失敗を重ね、没落した小沢氏が、トップの器ではない岸田首相に噛みついた、という構図に過ぎないようだ。どっちもどっち、というところだろう。
「中選挙区制を賛美するつもりもありませんが、かつての政治家は奇人変人でも当選する可能性がありました。党ではなく派閥が中心で、自民党ではあちこちで激しい政策議論が交わされていたものです。ところが今は小選挙区制のため、議員の誰もが党本部の公認を得ることにきゅうきゅうとしています。上の方ばかり見ており、自民党議員のサラリーマン化が進んでいる。その“大先輩”が小沢さんと岸田首相です。2人に深い政策ビジョンなどはなく、やはり『どっちもどっち』という感想になってしまいます」(伊藤氏)
本当の意味で「国民の生活が第一」と考える政治家にこそ、政権を担ってもらいたいものだ。
(井荻稔)