AERA 2023年8月28日号より
AERA 2023年8月28日号より

 業界で最強の防災レベルと言われる森ビルの建物なら、真夏でも耐えられそうだ。六本木ヒルズ(2003年開業)は、森タワーの地下に中圧ガスを用いた巨大な発電施設を備え、周囲が停電している時でも、就業人口1万5千人のオフィス、800戸の住宅は、空調も含めて普段通りの生活ができる。断水時は井戸水でトイレも使える。就業者や居住者とは別に、帰宅困難者5千人が3日間滞在できる食料や水も備え、「逃げ込める街」とうたっている。

「日本の高い地震リスクを憂慮した海外企業などの関心が高い」と森ビル広報室。

 今年秋に開業する麻布台ヒルズでは、約2万人が働き、1400戸の住宅もある。ここも六本木ヒルズと同じような発電施設を備え、地震後も空調を使って仕事や生活が継続できるとしている。

 中核となる森JPタワー(約330メートル)は日本一の高さ。関東平野の地盤と共振して長周期で大揺れしにくいように、ビルが揺れやすい周期を低めに抑えた設計にしてある。法が定める基準の1.5倍の揺れでも安全が保たれることも確かめてあるという。「地震は、備えていても想定外が起きることがある。自然のことはよくわかっていない、と念頭において余裕を持って設計した」(遠山解・森ビル構造設計部課長)

(ジャーナリスト・添田孝史)

AERA 2023年8月28日号より抜粋

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