ところが、最近の児童生徒の問題行動の原因は複雑に絡み合っていて、わかりづらい。さらに教員を取り巻く環境、児童生徒や保護者、世間の意識も大きく変化した。
「20年ほど前から先生の仕事が『サービスの提供』ととらえられる傾向が現れてきた。子どもや保護者の要求に従うのは当然だろう、という考えを持つ人が増えてきた」
積み重なる徒労感
小中高等におけるいじめの認知件数は61万5351件(21年度)もある。特に問題なのは、精神疾患を発症したり、大きなけがを負ったり、多額の金品の強奪をともなったりする「1号重大事態」が過去最多の349件となったことだ。命にかかわる事案も発生している。
「深刻ないじめによって児童生徒が不登校になったり、転校したり、精神疾患を発症したりする。そうすると、先生は『自分の指導が悪かったのではないか』と自分を責める。さらに、被害者の保護者は『先生の指導は生ぬるい。もっと厳しく加害者を指導しろ』と言い、加害者側は『そんなのがなんでいじめなんだ。うちの子は悪くない』と反発したりする。なかなかみんなが丸く収まるような解決とはならない。なので先生はものすごく疲弊する」
小学校低学年を中心に児童の暴力行為も急増している。
「小学校における暴力行為は10年前に高校を上回り、5年前に中学校を超えました。小学生と教員は『子どもと大人』という関係なので扱いやすいように思えますが、衝動性をうまくコントロールできないうえ、言葉で説明しても理解してもらえない場合もあって、対応は非常に困難です。『駄目だよ』と言って、『わかりました』と終わればいいのですが、また同じことを繰り返す。そうすると、徒労感を覚える」