レスベラトロールはポリフェノールの一種であり、カロリー制限を模倣する抗老化物質として知られています。レスベラトロールの寿命延長作用は、酵母、ショウジョウバエ、マウスなどの実験で確認されていますが、哺乳類ではまだわかっていません。いくつかの実験では、高カロリー食を与えたマウスにおいて、レスベラトロールの寿命延長作用が認められているだけです。つまり、暴飲暴食を繰り返す人にとってレスベラトロールはアンチエイジングの効果はあるかもしれませんが、普段から健康に気をつかってバランスの良い食事をしている人にとっては効果が十分ではない可能性があります。

 では、肌にとって「ちょうどよいストレス」とはどんなものでしょうか? 実はこのあたりは結論の出ていない研究分野です。少なくとも慢性的な炎症、つまり、長引く湿疹などは肌を老化させる可能性があることは知られています。言い換えると、慢性湿疹は「ちょうどよいストレス」ではないのです。個人的には、フラクショナルレーザーやダーマペンなど、皮膚に小さな傷を作り再生を促す美容法が「ちょうどよいストレス」になるのでは?と考えていますが、しっかりとした科学的検証が必要です。今後、うちの研究室で明らかにしていきたいと考えています。

 何事もやりすぎたら「ちょうどよいストレス」になりません。美容もレーザー治療も専門家の意見を聞いて、やりすぎないように気をつけましょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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