春風亭一之輔・落語家

 落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「汗」。

【貴重な誌面はこちら】過去には現代の肖像にも登場

 AERA dot.の連載を1週お休みさせて頂いた。

 週刊朝日の頃は担当者から「再来週は合併号なのでお休みです」などお盆進行の休みのお知らせがあった。ネットのみになり、そんな告知は一切ない。恐る恐る「あのー、来週から夏休みをとる予定なので1週……お休み……というわけには……いかないでしょうか……?」と聞いてみると「了解です!」と、いとも易々とお休みがもらえたではないか。自己申告制なの? だったら最初から言ってくれよ。聞いてみてよかった。

 ……ということで家族でグアムに行ってきました。私自身初めての南の島である。今まで気恥ずかしくて手を出さなかったサザンアイランド。機内ペーパークイズで高得点を出さないと上陸すらゆるされない、憧れのどろんこクイズの夢の島・グアム。ビバ ウルトラクイズ。

 桂宮治くんがよく行ってるらしく「向こうでなにしたらいいかな?」と聞くと「グアムなんて海、ビール、肉……だいたいこんなかんじですよ!」だって。とんだ原始人野郎。やだやだ。グアムに失礼です。せっかくのグアムなんだから楽しみたいが、3泊4日とタイトスケジュール。「とりあえず……イルカか……」と、安直にドルフィンウォッチングの予約をとってみた。1人昼食付きで1万500円也。うーん、相場が分からないが、とにかく「物価が高いのは承知で海外に来たんだ!」と自らを納得させる。2日目の午前中、いざ! 待ってろ、イルカども!!

「もうだめ……」。次男(15)が超人ハルクの如き真緑の顔色でクルーザーのデッキにひっくり返り、長女(13)は椅子にもたれて船酔いの末、熟睡モードに入ってしまった。しかも50分あまりのクルージングの結果、見られたのはお日様と大波とトビウオのみ。どうした、イルカ? 「イルカが見られなかった場合、お土産が出ます」というガイドさんの言葉通り、ハンドタオルとイルカが微笑んでいる絵の描かれたエコバッグをもらった。「まぁ自然相手だもの。こんなこともあるさ」とバスに揺られてホテルに帰る。部屋で仮眠するとハルクと化した次男も無事人間に戻った。そうだ、海に行こう。海は裏切らない。

著者プロフィールを見る
春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

春風亭一之輔の記事一覧はこちら
次のページ
ハハハハハハっ! ありえないっ!!