好投した日大山形のエース・庄司瑞

ノーマーク校が強豪校を撃破する──。前評判を覆すジャイアントキリングも高校野球の醍醐味だ。まさかの展開に当事者たる球児は何を思っていたのか。真夏の球場で見せた番狂わせを振り返る。「甲子園2023」(AERA増刊)の記事を紹介する。

 「全国民の8割方はうちが負けると思っている。試合前に荒木(準也)監督からそんな感じの激励を受けたのを覚えています」と振り返るのは当時の日大山形の主戦・庄司瑞。

 第95回の2回戦。初戦の日大山形は、2年前の優勝校・日大三(西東京)と対戦した。話題の兄弟校対決に世間の予想は日大三が優位だった。

 ところがゲームが始まると試合の主導権を握ったのは日大山形だった。

 庄司は強打の日大三打線をわずか1点に抑えて、味方の攻撃陣は全員安打。初回に本塁打で先制すると、七回には集中打で突き放した。

 勝因を庄司に問うと、これより前の春、3月の日大三との練習試合を挙げた。

「この試合で、ボコボコにされました。まるで大学生とやっているような気分でした。しかも主将欠場でこのレベル。格の違いを感じました。それからです。もっと練習しないといけないって危機感を持ちました」

 この一敗は成長の後押しとなった。それから最後の夏を迎え、甲子園という晴れ舞台で雪辱の機会を得た。

「自分も含めて日大三とやりたいって発言する連中が結構いました。厳しいトレーニングを乗り越えてリベンジしたいという気持ちをみんなが持っていたのだと思います」

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