それは、ある有名な漫画家との話だった。
「うちの母が、父親を亡くして、すっごく落ち込んだの。もう、あとを追って死ぬかと思った」
「そして、どうされたのですか……」
「それがね。元気づけようと思って『冬のソナタ』のDVDを渡したの。そしたら、それを見ているうちにすっかり元気になって、韓国に遊びに行くようになったの」
この話を聞いて、妙に納得したのは、わたしだけじゃないはず。
わたしの知人の女性も、韓流ドラマにはまって、韓国語を勉強したり、韓国に行くためにパートを始めたりした。
そして、今や、昼メロだけじゃない、深夜にやる夜メロという言葉もできた。
深夜に結構激しい恋愛ドラマをやっていてる。
しかも、俳優はイケメン。女優もそれなりに熟女。
それでも、わたしたちよりもはるかに若いはずなのにわたしを含めて、すっかり、自分がその女優になった気分で見ている。
また、キャッチコピーもいい。
「金曜の夜、あなたは、恋に落ちる」
なんて言われると、ドキっとする。そして、たいてい、
「出会う順番が違っただけ」
なんて、言われると、
「そう、そう」
などと、勝手に納得している。
まるで、わたしが、かつて見ていた祖母の姿。
「ありえない」と、わかっていても、ドキドキする。
そして、心のどこかで叫んでいる。
「こんな恋がしたかった」
「こんな頃もあったんだ」
もっとも、隣を見れば、洗濯物の山。
「これをたたまなければ……」と、洗濯物をたたみながら、夜メロにはまっている。
自分のラブシーンでもないのに、ワクワク、ドキドキしてしまう。
自分に言われたセリフでもないし、自分が言ったセリフでもないのに、一言一句に感動している。
「ひと晩一緒だっただけで勘違いしないで」
こんなセリフ言ってみたい。
「僕のことも見て」
こんなセリフ言われてみたい。
ひとりでドキドキ興奮している。
そして、やっとわかった。メロドラマは、人を元気にさせるということ。