かつて、わたしの祖母は、昼のメロドラマにはまっていた。
だいたい、男と女のスレ違いの連続。そんなドラマを見て祖母は、
「あかん、あかん、その人に騙されている」
「そっちに行ったら、会われへん」
とにかくうるさかった。
小学生だったわたしは、
「なんで、こんなものを見ているんだろう」
不思議だった。
でも、祖母の隣で見ていた。
そして、母は、
「そんなものを由里子に見せないでよ」
と、祖母を怒りながら、自分も見ていた。
そんな母もわたしが高校生の頃には、昼メロにすっかりはまっていた。
その頃、学校があるわたしは、テストの期間中や休みの期間中しか、そんなドラマを見ることがなかったけれど、
「こんな話あるわけないわ」
「この二人どうなるんだろう」
と母は、うるさかった。
たまにそんな母を見て、あきれていた。
けれど、わたしも専業主婦時代は、やっぱり見た。
そして、近所の主婦メンバーと話題にした。
もちろん、メロドラマは、昼だけじゃない。
夕方も夜も似たようなドラマができて、完全にはまっていた。
それどころか、とっくに自分が通り過ぎた年齢でも、自分のことのように興奮した。
自分と同年代のものには、もっとはまった。
「AGE 35」というドラマ、35歳の主婦が元カレと不倫をする話。
幼稚園でお母さんたちは、その話題でもちきりだった。
「やっぱり、椎名桔平カッコいいよね」
「わたしも、誰が迎えにきてくれないかなあ」
「あかん、あかん、もう服脱げないわ」
そんな話で、近所の喫茶店で盛り上がった。
そして、ある時に気づいた。メロドラマは、人を元気にするということに。