40~50代のほうが20~30代よりも公的年金に対する期待が低いのは、年齢を重ね老後のことが現実味を帯びてきているからだろう。単に不安がるばかりではなく、何らかの自助努力が必要だと考える人も増えてきている。また、元本割れの可能性がある半面、高収益を期待できる金融商品に対する意識についてもヒアリング。「積極的に保有しようと思っている」もしくは「一部は保有しようと思っている」と答えた人は、13年の調査で15.8%だった。
■高まる投資意識
だが、20年の調査から急増し、今回は49.3%に達している。その背景には、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の調査報告が物議を招いたことがある。いわゆる「老後2千万円問題」で、公的年金だけでは30年間で約2千万円が不足すると世間では受け止められた。その結果、自分でも何らかの投資を始めるべきだという意識が高まった。
もっとも、闇雲に投資を実践したからといって、着実な成果を期待できるわけではない。自助努力で確保すべき老後資金の金額にも、少なからず個人差があるだろう。目標額の算出方法について、菱田さんは計算式で「予定される収入や資産」−「予定される出費」=「不足額」と示してくれた。
「蓄えておくべき老後資金の計算式自体は非常にシンプルなのですが、老後に予定される収入や資産の状況についてきちんと調べる必要があります。また、老後の支出も生活費の想定だけにとどまらず、子どもの結婚資金援助や家のリフォーム費用など、まとまった出費も見積もっておきます」
大病を患った場合の医療費や、自立生活が困難となった場合の介護費用も念頭に置きたい。ただ、医療費は「高額療養費制度」で自己負担がかなり抑えられるのも確か。介護にしても、「施設入居を迫られない限り、介護保険のカバーで自己負担は限定的」(菱田さん)と言える。
(金融ジャーナリスト・大西洋平)
※AERA 2023年3月27日号より抜粋