神田は大学で数学を専攻していた根っからの「理系女子」であり、彼女のズレもそのあたりに起因しているように見える。あくまでも雑な一般論だが、理系の人間は世の中や社会とは距離を置いて独特の理屈っぽい考え方をする傾向がある。神田も自分がロジカルな思考の人間であると語っている。
しかし、バラエティやお笑いというのは、そんな理系人間の計算を超えたところで成り立っている職人芸の世界である。人工知能マシン「神田AI花」は、理屈が通じないところに無理やり理屈を当てはめることで、常人には考えつかない、トンチンカンな答えをひねり出す。それが時として大きな笑いを生む。
少し前に人工知能チャットボットの「ChatGPT」が話題になったとき、ChatGPTに何か質問をして、少しズレた面白い答えが返ってくるのを楽しむ、という企画がYouTubeなどでもよく見受けられた。
神田愛花をバラエティ番組に呼ぶというのは、これと同じことだ。神田にコメントを求めると、期待を上回る面白い答えが出ることもあれば、単に意味不明のズレた答えが返ってくることもある。そこには生身の人間の発想を超えた新しい刺激が潜んでいる。
いつの間にか当たり前のように私たちの日常に定着した配膳ロボットやスマートスピーカーのように、「神田AI花」もいずれはバラエティに欠かせない存在になっているかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)