バラエティ番組は戦場である。わずかなスキを見計らって短く的確なコメントを差し挟む技術がなければ、長く生き残ることはできない。そのため、バラエティタレントは大きく2つの種類に分けられる。
1つは、いつでも確実に鋭く面白いコメントができる頭の回転が速いタイプである。いまテレビの第一線で活躍している芸人はほとんどがここに属する。
もう1つは、確実にとぼけたコメントをして場を和ませてくれるタイプである。前述の滝沢カレンなどはここに当てはまる。この種のタレントは「天然ボケ」「おバカキャラ」などと呼ばれることもあるが、本当のおバカであればこのポジションは務まらない。ある程度の命中率と破壊力を両立させていなければ、バラエティの常連になることはできない。
どちらのタイプにも「確実に」という言葉が付いていることに注目してほしい。バラエティ番組では1人の出演者に何度も発言の機会が回ってくるものではない。10回に1回の割合で面白いことを言えるような人はバラエティでは通用しない。ある程度の確実性も必要なのだ。
しかし、神田はどちらにも当てはまらないバラエティ界の異端児である。彼女は「不確実にズレたことを言う」というタイプだ。何が飛び出すかわからないびっくり箱のような存在である。この不確実性を一種の起爆剤のようなものだと考えて、『ぽかぽか』のスタッフは彼女を起用することにしたのだろう。
実際、『ぽかぽか』では、彼女はアナウンサーでありながら進行の役割を与えられていない。番組の進行はハライチの澤部佑が務める。神田はその外側で好き勝手にバットを振っていればいい。ほとんど空振り、でもたまにホームランが出る。神田はそれで構わないとスタッフも割り切っているように見える。