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子どもの発達や心の問題を診療する児童精神科医が足りない。診療を受けたくても予約が1年待ちのところもあるという。なぜこのようなことが起きているのか。現状や課題について、国立国際医療研究センター国府台病院・児童精神科診療科長で児童精神科医の宇佐美政英医師に取材した。

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予約が取れても3カ月待ち

 2022年10月、関東地方に住む会社員女性は、小学1年生の息子の担任から呼び出しを受け、発達障害の可能性があることを指摘された。専門の医療機関で診察を受けるように勧められ、渡されたリストにあった病院の小児科に電話したが、「発達障害を診る児童精神科部門は予約制で、当面、予約がいっぱい」と断られた。リストはもちろん、リスト以外の医療機関もネットで調べて次々電話をかけたが、最も早いところで3カ月半、半年以上先の日程を言われたことも。

「ただでさえ予約が取りにくいうえに、就学前健康診断で予約が集中したようです。予約自体を受けてもらえないところも多かった」と女性は話す。結局、かかりつけの小児科医を受診し、大学病院に直接紹介してもらうことができたが、それでも3カ月待ったという。

 関西に住む女性も1年前、当時小学1年生だった娘の受診予約で苦労した。大学病院やこども医療センターなど大きな病院で診てもらいたくて近隣の県まで広げて電話をかけたが、予約は一番早くて半年先。待つのが不安で、次々電話をかけ、4カ月後の予約が取れた県外の発達専門のクリニックで診てもらうことができた。

 自閉スペクトラム症(ASD)と診断され、療育プログラムを勧められたが、クリニックまで片道2時間近くかかる。女性は、

「まだ1年生で体力がなく、学校もあるので、通うのが難しい。できれば自宅近くで同じように療育を受けられればいいのですが……」

 と頭を抱えている。

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発達障害の指摘で、受診希望者が急増