発達障害の指摘で、受診希望者が急増
なぜこれほどまでに、受診まで時間がかかる状況が起きているのか。
一つ目の理由は、発達や心に問題を抱えている子どもが増加していること。近年特に増えているのは、発達障害だ。国立国際医療研究センター国府台病院・児童精神科で長年子どもたちを診療してきた診療科長の宇佐美政英医師はこう話す。
「世界的に見た自閉スペクトラム症の有病率は、1975年には5000人に1人でしたが、2023年4月のCDC(米国疾病対策センター)の発表では36人に1人まで急増しています」
日本でも発達障害が増えている。全国児童青年精神科医療施設協議会が、同会に加盟している38の医療施設を対象に「2021年度に児童精神科外来を受診した子どもの疾患」を調べたところ、発達障害が全体の半数を占めていた。
「当院の外来受診者も、2003年からずっと発達障害が全体の半数を超えています」
と宇佐美医師。
「発達障害がなぜ増えたのか、著名な論文でも『まだよくわからない』とされています。ただ、病気自体が増えたというよりは診断名が知られたとか、世の中で認知されたといったことが大きく関係していると思います。実際、学校の先生たちもちょっと疑わしければすぐに指摘しますし、適応指導教室(不登校児を対象にした公立のフリースクール)などを利用する際も『診断書をもらってきてください』という時代です」
また、子どもが抱える問題は、発達障害だけにとどまらない。21年度の小中学生の不登校は約24万人で9年連続増加し、過去最多となった。 10年前と比較して小学生は3.6倍、中学生は1.7倍(中学生は20人に1人が不登校)に増加。21年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数も、過去最多を更新した。子どもの自殺も増え、22年に自殺した小中学生と高校生は512人にのぼり、1980年以来、最も多くなっている。
子どもの発達や心を診療する専門医はわずか500人
児童精神科医が不足していることも、初診待ちが長期化する理由の一つだ。