同時代を生きる老若男女の着こなしを取材し、イラストと文章で一人ひとりについて考察をまとめた記録集。……といっても、有名人のファッションチェックではない。登場するのは全国的に知名度の低い地方在住のデザイナー・作家など。目的は当人も自覚していない着こなしの「無意識」の部分を読解することだ。
 彼らに共通するのは既製の衣服をただ購入・消費するのとは異なる独自の姿勢を持つこと。ストッキングを珈琲で染めたネックレスを制作するデザイナー姉妹、ゴミとなった服を回収して再販売する古着屋経営者……一見異色に見える感覚を、本書ではお金に代わる「新しい経済」と呼ぶ。彼らの半生を通して、現在の地点に行きつくまでの過程が明かされる。例えばデザイナー姉妹は家族で作品制作を分担していたりと、地方在住ならではの強みが描かれているのも読みどころだ。「着る」という身近な行為が、最終的には社会の話へと結びついてゆくダイナミズムは興奮モノ。読み終える頃には、自分も誰かの着こなしを考察したくてたまらなくなる。

週刊朝日 2015年4月17日号

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